昔はインフルエンザに根本的に効く薬はなく、そのため病院へ行っても一時的に症状を抑える解熱剤のような薬しか処方をしてもらうことができませんでした。
そのため、「インフルエンザに感染しても病院へ行っても、お金が無駄になるだけ」なんて考えて方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、2001年にタミフルとリレンザが、日本国内の病院でも処方してもらえるようになってからは、その状況は大きく変わっています。
それらの薬はインフルエンザウィルスの増殖を抑える薬なので、根本的な治療に役立つ薬なんですね。また、現在ではそれら以外にもラピアクタ、イナビルなどの薬が登場しています。
ただ、それだけ処方される薬が多くなってくると、それがの違いがよく分からないという方がほとんどではないでしょうか?
そこで、本記事では現在日本国内で処方されている、インフルエンザ治療薬の違いについて、比較表を交えて分かりやすく解説します。
インフルエンザに治療に使用される主な4種類のノイラミニダーゼ阻害薬
現在、国内で処方されていインフルエンザ治療薬の中でも主流となっているのが、『ノイラミニダーゼ阻害薬』と呼ばれる種類の薬です。
この薬剤の特徴は、増殖したウィルスを細胞の外に出さないように作用するところです。そして、その働きのおかげで、症状の重症化を抑えることにつながります。
なお、現在日本で使用されているノイラミニダーゼ阻害薬は、主に以下の4種類です。
- タミフル
- リレンザ
- ラピアクタ
- イナビル
■インフルエンザ治療薬の比較表
商品名 | タミフル | リレンザ | ラピアクタ | イナビル |
---|---|---|---|---|
一般名称 | オセルタミビル | ザナミビル | ペラミビル | ラニナミビル |
タイプ | 内服 | 吸入 | 点滴(注射) | 吸入 |
用量 | 1日2錠×5日間 | 1日2吸入×5日間 | 1回 | 1回 |
予防適応※1 | 1日1回×7~10日間 | 1日1回×10日間 | 適応なし | 適応なし |
薬価※2 | 3,091円 | 3,374円 | 4,161円 | 6,043円 |
※1 家族に感染者がいた場合に、予防のために処方をしてもらうことです。
※2 薬価は本記事執筆時点のデータです。今後、変更になる可能性はあります。
なお、表をご覧になっただけでは、それぞれの薬の違いについて、分かりにくい点もあるかと思いますので、続いてそれぞれの特徴について解説します。
1.タミフル(一般名称:オセルタミビル)
タミフル(一般名称:オセルタミビル)は、カプセルタイプの飲み薬で処方されるのが一般的です。処方期間も決まっており、1日2回の5日日間を処方されることになっています。
紹介した4種類の中では、カップセルタイプで処方されるのはこれだけのため使い勝手も良く、国内での備蓄量・流通量とも最も多いのがこの薬です。
■タミフルと異常行動の関係性について
また、タミフルと聞いて「飲むと異常行動を起こす薬」と思われている方がいますが、タミフルと異常行動の関係性を示すことができるデータというのは、今のところありません。
過去にタミフルを飲んでいた子供がマンションか転落死するなどの事故があったため、タミフル=異常行動と結びつける方が多いですが、他の薬を飲んでいた方や、薬を飲んでいない方のインフルエンザ感染者の中にも異常行動を起こした例は報告されてまいます。
そのため、現在はタミフルが異常行動の原因であると考えているお医者さんは正直少ないです。なお、タミフルと異常行動の関係性については、詳しくは次の記事をご参照ください。
また、タミフルと異常行動の因果関係を示すデータが2010年以降、報告されていないことは厚生労働省のHPでも次のように公表されています。
その後、平成22(2010)年8月、平成23(2011)年11月、平成24(2012)年10月、平成25(2013)年10月及び平成26(2014)年10月に開催された安全対策調査会が、追加的に得られた副作用情報等の評価を行いましたが、タミフルと異常行動との因果関係を示す結果は得られていない
ただし、予防的な安全策として10代の子供への処方は、現在でも原則として禁止されています。
また、1歳未満の子供への処方については、安全性が確認されていませんので、使用は慎重になるべきです。製薬会社も1歳未満への使用は推奨していませんからね。
ちなみに、効果についてですが、タミフルに対して耐性を持つインフルエンザウィルスもいるため、そのようなウィルスが流行してしまうと、有効性は激減します。
吸入薬が苦手な方。1歳以上の方。
なお、10代への使用は原則禁止されています。
2.リレンザ(ザナミビル)
リレンザ(ザナミビル)は粉末の吸入薬タイプのお薬です。こちらもタミフル同様に、1日2回を計5日間利用することになります。
こちらは粉末タイプの薬になるので、4歳以下の小さい子どもは吸引することが難しく、処方されるのは5歳以上の場合が多いです。
また、肺へ吸入する薬であり、内服薬や点滴・注射のように血液中を通ることが無いので、全身へ影響は少なく副作用が起こりにくい薬と言われています。
なお、薬の効果についてですが、耐性を持つウィルスがほとんど発見されていないため、有効性は高いと言えるでしょう。
その証拠に日本国内でもタミフルに耐性を持つ新型インフルエンザが流行するのに備えて、リレンザの備蓄を行っています。
自分で薬が吸入できる方。できるだけ効果の高い薬を使用したい方。タミフルが使えない10代の方。
3.イナビル(ラニナミビル)
イナビル(ラニナミビル)は2010年に処方がスタートした、比較的新しいノイラミニダーゼ阻害薬です。形態はリレンザと同じく吸入タイプになります。
なお、この薬の大きな得量は、イナビルはタミフルやリレンザとは違い、細胞の中に長期間に渡り、とどまることができるので使用は1回だけでOKな点です。
ただし、正しい方法で薬剤を吸入しないと効果を期待することはできませんので、小さいお子さんへの処方は難しいと言えます。
また、効果に関してですが、リレンザと似た薬であるので、耐性を持つウィルスがほとんどなく、現在のところは効果を期待できるお薬です。
自分で正しく薬が吸入できる方。1回の処方だけで済ませたい方。
4.ラピアクタ(ペラミビル)
点滴で注射するタイプの薬がラピアクタです。こちらも2010年から保険適応となった新しいお薬になります。
内服も吸入もする必要がありませんので、重症で体を動かすことができない(自分で薬が飲めない・吸入できない)方には利用しやすい薬です。
なお、1歳未満への投与も認められているため、乳児にも使用をすることができます。
この薬が向いているのは?…1歳未満の子供。重症で自分で薬を飲めない・服用できない患者さん
1歳未満の子供。重症で自分で薬を飲めない・服用できない患者さん。
本記事のまとめ
インフルエンザの治療に使用される、4種類のノイラミニダーゼ阻害薬について、こちらでは詳しく解説しました。
なお、タミフルやリレンザのように5日間に渡り飲む薬の場合、途中で飲むことをストップすると、ウィルスが耐性を持つ可能性が高まりますので、決まった日数分は絶対に服用にしてください。
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